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遺言書の書き方
遺言とは?
遺言の方式
遺言で出来ること
遺言のポイント
遺言執行者

遺言書の書き方

遺言書には、主に3つの種類があります。
それぞれ基本的な書き方は同じですが、微妙に異なる性格を持っています。

死の直前、病床で「財産全部を長女に譲る」と言って亡くなったとしても、これでは法的効力がありません。
法律で規定された方式で文書にして残すことが重要なのです。
※特別な場合を除きます

遺言とは?

遺言(いごん)とは、「死後の法律関係を定めるための最終意思の表示」です。

民法961条によると、遺言は、満15歳以上意思能力のある者であれば誰でも行う事ができると定められています。
したがって、被保佐人被補助人の人が遺言をする場合でも単独で行うことができます。
成年被後見人の人は「事理を弁識する能力が回復していて、遺言をする能力があると医師二人以上が証明し、遺言作成時に医師に立会いをしてもらう」ことで遺言をすることが出来ます。

遺言は、新しい遺言が優先されるので、遺言を取り消す場合は、新しい遺言を書けば古い遺言を取り消すことができます。
また、遺言で相続分の指定や遺産分割方法の指定、または遺贈する場合には遺留分に注意しなければなりません。
遺留分に反する事になれば、遺留分減殺請求の対象になります。

遺言は、あなたの最終メッセージです。
あなたが築いた財産を相続人が受継ぐことになるので、あなたの最終意思を相続人に知らせる必要があります。
あなたの残した財産によって相続が「争族」にならないよう、あなたの意思を正確に相続人に託しましょう。
また、「遺言」と聞くと「お金持ちの人が書くもの」と思っている方が多いようですが、決してそんな事はありません
どなたでも、遺言を遺しておく必要があります。
なぜなら相続人は、あなたがいなくなった後悲しみにくれながらもいろいろな手続を期限内に済ませなければならないからです。煩雑な手続きを簡素化するためにも、事前に相続人や全財産を調査しておいたり、財産目録の作成等について着手しておくことは残された愛する家族への最後の思いやりとも言えるでしょう。
あなたの築いた財産です。「あなたが使えなくなったらどうしたいのか」「どうしてほしいのか」遺言書を作って相続人に示しておいてください。

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遺言の方式

遺言には普通方式遺言特別方式遺言の2つの方式があります。
普通方式の遺言はさらに自筆証書遺言公正証書遺言秘密証書遺言に分類されます。
特別方式の遺言は臨終遺言と隔絶地遺言とに分けられ、さらに臨終遺言は一般臨終遺言難船臨終遺言とに分けられ、隔絶地遺言も伝染病隔絶地遺言難船隔絶地遺言とに分けられます。
したがって民法で規定している遺言は全部で7種類ある事になります。


ここでは、一般的な次の3つの遺言の方式をみていきます。

自筆証書遺言
秘密証書遺言
公正証書遺言


まずはそれぞれの違いを御覧ください。

   自筆証書遺言  秘密証書遺言  公正証書遺言
 難易度  簡単  難しい  やや難しい
 メリット ・費用がほとんど
 かからない
・証人が不要
・いつでもどこでも
 作成可能
・作り直すことも容易
・費用があまりかからない
・誰にも知られずに作成
 できる
・代筆でも作成可能
・内容に不備が起こりにくい
・検認手続が不要
・紛失しても謄本を再発行して
 もらえる
・字を書くのが困難な人、ろう
 者でも利用出来る
 デメリット ・紛失の可能性がある
・発見してもらえない
 可能性がある
・方式不備になる
 可能性がある
・検認手続が必要
・字を書くのが困難な
 人は利用できない
・本人が書いたか否か
 で争いになる
・紛失の可能性がある
・方式不備になる可能性が
 ある
・検認手続が必要
・字を書くのが困難な人は
 利用できない
・費用が余分にかかる
・証人に内容を知られる
・財産関係の書類、戸籍謄本を
 用意しなければならない
 費用  用紙、封筒代  公証人の手数料
(11,000円)
 公証人の手数料
(5,000円〜)
 証人  不要  二人必要  二人必要
 保管方法  本人が保管  本人が保管 ・原本は公証役場
・正本と謄本(写し)は本人が
 保管
 開封方法 発見後すぐには開封できず、 家庭裁判所の検認が必要
※検認手続期間は1〜2ヶ月
発見後すぐには開封できず、家庭裁判所の検認が必要
※検認手続期間は1〜2ヶ月
 発見時点で開封できる
 偽造、紛失 ・偽造される可能性
 あり
・紛失、発見されない
 可能性あり
・偽造される可能性ほぼ
 なし
・紛失、発見されない可能
 性あり
 偽造、紛失の可能性ほぼなし
 秘密性 遺言の存在、内容共に秘密にできる ・遺言の存在は秘密に
 できない
・遺言の内容は秘密に
 できる
・遺言の存在、内容共に秘密に
 できない
・公証人と証人に内容を知ら
 れる
 おすすめ度  50%  10%  90%

※証人になれない人
・未成年者
・推定相続人、受遺者
・推定相続人や受遺者の配偶者、またはその直系血族
・公証人の配偶者、4親等内の親族、書記および従業員

 自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者がその遺言の全文日付および氏名を自分で書き、これに押印すればよいとされていて、民法の認める遺言の方式の中では一番簡単なものです。
自筆証書遺言は遺言をする人が文字を書くことができ、印を押すことができれば自分の思った事を自由に遺言として残すことが出来ます。
押印に使う印鑑は認印でも拇印でも可能ですが、やはり印鑑証明のとれる実印が一般的です。
しかし、法律の定める方式にしたがわずに行った遺言は、残念ながら法的効力は存在しませんので、以下の項目に挙げている事項に注意して遺言書を作成することが必要です

◆注意点、作成方法◆
・遺言は必ず自書することが必要があり、他人に代筆をさせたりワープロで打ったりすることは
 認められていません
・遺言書の用紙、様式は自由で、遺言書が数枚に渡る場合でも継目に契印がなくてもよく
 同一性が認められる限り有効とされています。
・遺言は人の最終意思を表したものであり、遺言が2通ある場合には日付が後の遺言の方が前
 の遺言に優先
します。
 ですから、自筆証書遺言には必ず日付を自書することが必要です。
・遺言の字句を訂正したり加除した場合は、
 (1)変更した場所に捺印をし、
 (2)上部欄外に○字抹消、○字加入と記載して捺印するか
 (3)遺言の終わりに「○行目○字削除、○字加入」と記載した上で署名捺印 するなどの方    式によって訂正の事実を明確にしなければなりません。
  ※もし、この方式に従わなかった場合には変更がなかったものとして取り扱われることにな   りますので注意が必要です。
・遺言書に封をしたり、封印することは必ずしも要求がされていませんが、封がある場合には家
 庭裁判所で開封することが必要となります。


 秘密証書遺言
自筆証書遺言の場合と異なり、秘密証書遺言では遺言者が必ずしも遺言を自筆する必要はありません
遺言の内容を秘密にして遺言をすることが出来るのが特徴です。
秘密証書遺言は遺言書そのものの方式ではなく、遺言書を秘密に保管する為の方式である為に書面自体には定められた方式はありません。また公正証書遺言とは異なり、公証人が遺言の内容まで関与せず、遺言書が封印の中に封入されているという事を公証しておくだけのものです。

秘密証書による遺言方式に関する記載についての手数料は、公証人手数料令第28条に定額11,000円とすると定められています。

◆注意点、作成方法◆
・遺言者が遺言書に署名押印をして、それを封入した上で証書に用いたものと同じ印鑑で封印
 しなくてはいけません。遺言書自体は自書したものでなくてもよくワープロで作成したり、
 代筆してもらったものでも構いません。
 また、日付の記載も必要ありません
・遺言者は公証人一人及び証人二名以上の前で封書を提出して、
 (1)自分の遺言書であること
 (2)遺言書が自筆でない場合にはその筆者の氏名、住所を述べること
 が必要です。
・公証人が遺言書の提出された日付および遺言者の申述を封書に記載した後、遺言者および証人
 と共に署名押印をし、これによって秘密証書遺言が成立します。
・秘密証書遺言の訂正は自筆証書遺言と同じ方式で行うことが必要です。


 公正証書遺言
公正証書遺言は、遺言者が公証役場に出向くか、公証人に自宅などに来てもらうかして作成します。
公正証書遺言は秘密証書遺言と異なり、遺言の内容も公証人が関与し、遺言書の作成、保管をしてもらうことができます。

◆注意点、作成方法◆
証人二名以上の立会いの下、遺言者が遺言の内容を公証人に口授し、公証人がこの内容を筆
 記します。
・公証人が筆記したものを遺言者と証人に読み聞かせ又は閲覧させて遺言者と証人が筆記の内容
 が正確であることを承認し、これに署名押印します。
・遺言者が署名できない時には、公証人がその理由を付記して署名に代えることができます。
・最後に公証人が正規の手続きによって遺言書が作成された旨を付記して署名押印すれば公正証
 書遺言が成立。
・公正証書遺言の原本は作成した公証役場において保管がされます。


 公証人手数料一覧

 目的の価額  手数料
 100万円以下  5,000円
 100万円を超え200万円以下  7,000円
 200万円を超え500万円以下  11,000円
 500万円を超え1,000万円以下  17,000円
 1,000万円を超え3,000万円以下  23,000円
 3,000万円を超え5,000万円以下  29,000円
 5,000万円を超え1億円以下  43,000円
 1億円を超え3億円以下  43,000円に5,000万円までごとに
 13,000円を加算
 3億円を超え10億円以下  95,000円に5,000万円までごとに
 11,000円を加算
 10億円以上  24万9,000円に5,000万円までごとに
 8,000円を加算


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遺言で出来ること

 相続に関して
遺産分割の方法の指定又はその指定の委託
相続人の廃除及び廃除の取り消し
相続分の指定又はその指定の委託
遺産分割の禁止
相続人の担保責任の指定
遺言執行者の指定又はその指定の委託
遺留分減殺方法の指定
特別受益の持ち戻しの免除

 財産の処分に関して
財産の遺贈
財団法人を設立する為の寄付行為
財産を信託法上の信託に出すこと

 身分に関すること
認知
後見人の指定及び後見監督人の指定
祭祀承継者の指定

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遺言のポイント

遺言のポイントはいくつかありますが、主なポイントは以下の3点です。

1、漏れ無く、内容を具体的に記載する
2、遺留分に注意する
3、民法の規定の方式に則って作成する


1、漏れ無く、内容を具体的に記載する
内容に漏れがある場合
遺言書に記載されていない財産については遺産分割協議が必要になります。
せっかく遺言書を作成しても、「漏れ」があることが不要な争いの引き金となることもあります。
可能な限り漏れをなくし、思い通りの相続家族の和の維持を達成しましょう。

内容が具体的でない場合
全財産の1/4を相続させるといった抽象的な内容、「譲る」や「あげる」という文言を使った内容では、争いの火種になることがあります。
相続人の事を考え、争いを起こさないように個別具体的に記載するようにしましょう。
また、「譲る」や「あげる」という文言では遺贈と判断されることもあり、税金の額が異なる場合も出てきますので、「相続させる」と記載するようにしましょう。

2、遺留分に注意する
遺言では自由に相続人の相続分を決定することができるので、遺産を相続させたくない人に一銭も相続させないということも出来ます。しかし、遺留分を考慮せず思うままに相続分を記載してしまえば、その相続人から遺留分減殺請求をされることも考えられます。
円満な相続を実現するためには、たとえ相続させたくない人がいたとしても遺留分程度は相続させておくほうが良いでしょう。

3、民法の規定の方式に則って作成する
遺言を作成したとしても、方式が不備で効力を持たないただの意見書となってしまったらどうでしょうか?
労力が無駄になるばかりか、相続人達にとっては不要な手続きが必要になってしまいます。
せっかく作成するならば、民法の規定に従って作成するよう十分に注意を払うことが大切です。

その他のポイント
 →書面でない(口頭、テープレコーダー)ものは無効
 →押印がないものは無効
 →署名がないものは無効
 →日付がないものは無効
 →変更(訂正、加筆など)は規定の方式によらなければ無効
 →2人以上でする共同遺言(夫婦で同じ証書でする遺言など)は無効
 →公序良俗に反する内容の遺言は無効
 →遺言により任意の遺産相続分指定ができる
 →法定相続分にこだわらなくても良い
 →遺産分割方法を指定できる

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遺言執行者

遺言執行者とは、「相続財産の管理や遺言の執行に必要なすべての行為を行う権利と義務を持つ人物」で、相続人間の利害を調整しながら適正な処理を行います。

主な仕事は、次のとおりです。
・財産目録の作成
・遺言者が遺言で認知をした場合、その届出
・遺言に従い、相続人、受遺者への財産の引渡し
・遺言で廃除を行う場合、家庭裁判所にその旨の申し立て


遺言執行者は相続人の中から選ぶ?
遺言は、相続人間の利益が相反する場合が多く、相続人に遺言の執行を任せる事が適当とは言い切れません。
なぜなら相続人の対立が生じたり、それぞれの思惑によって公正な遺言の執行を妨げてしまったり、執行ができたとしても対立した状況であっては後日、紛争となるおそれがあるからです。
また、遺産の中身によっては、管理行為を伴ったりする場合があり、法律的専門知識などが必要な場合もあります。
このような場合に、相続の専門家に遺言執行者を依頼しておけば、遺言をした人の意志に添い、相続人間の利害を調整しながら、遺言の適正な処理を行いスムーズな相続手続を行う事が可能になります。

遺言執行者は二つの方法で専任できます。
・遺言で選任をする場合
・相続開始後に家庭裁判所に請求して選任する場合
但し、予め遺言で選任しておいた方が相続後に遺言執行者の選任を家庭裁判所に申立てする必要がない為、相続手続を速やかに行う事ができます。


 遺言執行者を選任するメリット
・遺言執行者には単独で行う権限があるので、遺言の内容や遺産分割を確実に実行出来る
・遺言執行者は、相続人全員の代理人とみなされ代表として手続きを遂行することが出来る
 ため、手間が省略され、迅速な処理が可能になる

・業務放棄の可能性が低い
・他の相続人とのトラブルになりにくい
 ※専門家に依頼した場合


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